不動産貸付が事業として行われているかどうかの判定①不動産貸付が「事業的規模」であるかどうか により、不動産所得の金額を計算上、必要経費の取扱い等その取り扱いが変わってきます。

ここでは、不動産貸付が「事業的規模」と認められる場合受けられる特典及び、不動産の貸付の規模が事業的規模かどうかの判定について説明します。

事業的規模と認められる場合に可能となる主な特典
事業的規模と認められる場合に可能となる主な特典(一定の要件があります)
・業務用資産の取壊し、除却等損失の経費算入
・賃貸料等の回収不能による貸倒損失について、回収不能となった年分の経費算入
・青色申告の専従者給与又は白色申告の事業専従者控除の経費算入
・65万円の青色申告特別控除  


不動産貸付が事業として行われているかどうかの判定
事業的規模の判定方法
不動産の貸付が事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているか、どうか(・貸付資産の規模・賃貸料の収入状況・貸付資産の管理に係る人員や施設の設置等)によって、実質的に判断することとされています。


建物の貸付
建物の貸付については、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているとして取り扱われます。

・貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること
・独立家屋の貸付については、おおむね5棟以上であること
(5棟10室基準)


土地だけの貸付
土地だけの貸付の場合についても基本的には、上述の通り、社会通念上、事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうか(賃貸料収入、貸付資産の管理に特別の人的、物的施設を設けているか等)によって、実質的に判断することとされています。

しかし、この判定が困難な場合、上述の建物の貸付けの場合の形式基準を参考にしても差し支えないと考えられます。

つまり、駐車場など土地だけの貸付の場合、明確な基準はありませんが、5台分をアパート1室と換算するするのが一般的です。
従って、駐車場の場合、 50台以上の件数があれば「事業的規模」と判断できます。

不動産貸付が事業として行われているかどうかの判定②
事業的規模のデメリット
個人事業税の支払いが生じる
事業的規模に該当するとして申告した場合には、上述のようにメリットも多いですが、デメリットも存在します。それは個人事業税がかかってくるという事です。
厳密には個人事業税における「事業的規模」の基準と、所得税における「事業的規模」の基準は異なっていて、両者は完全には連動しないのですが、「5棟10室基準」を満たせば通常個人事業税がかかってくることとなります。

個人事業税の計算では、65万円や10万円の青色申告特別控除の適用前の額から、290万円を控除した額の5%が個人事業税としてかかってきます。納付時期は8月と11月の2回で、都道府県から通知がと届くことになっています。


複式簿記での記帳が必要
65万円の青色申告特別控除の特典を受けるためには、複式簿記で記帳を行ったうえで、貸借対照表と損益計算書の作成が必要となってきます。ただし、事業的規模ではなく、白色申告を行う場合でも、2014年からは簡易簿記による記帳は義務付けられています。事業的規模ではない場合にも青色申告特別控除を目指す方が得策といえます。


不動産所得は事業的規模の基準が、事業所得と比べて比較的明確です。不動産経営を始めたばかりの頃は、事業的規模に該当しない場合であっても、運用する物件を増やしていく中で事業的規模と認められるケースもあります。該当しそうになったら青色承認申請書や青色事業専従者給与の届出の提出基準にはご注意ください。


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